工程スケジュール自動化支援

 工程スケジュール自動化支援とは、弊社の得意とするAI利用に限らず、製造企業向けに生産工程 のスケジュール作成作業を手作業から自動化することを目的とした支援業務のソリューションです。

工程スケジュールとは

 工程スケジュールとは、保有設備でより多くの製品を効率よく製造することを目的に作成する工程計画のことです。工程スケジュールは企業の業績に直接関わる重要なもので、保有設備を効率よくスケジュールすることにより、生産性の向上、設備投資の削減や納期遵守に繋がります。
 製造工程のスケジュールは、一般的に機械稼働率を最大にするスケジュールが求められます。機械稼働率を最大にするということは、限られた機械設備や時間の中で最大の生産を目指すということで、コスト競争力の確保、短納期・納期遵守による顧客の信頼、適正在庫によるキャッシュフローの改善等の多くのメリットがあります。
 工程スケジュールの作成には多くの情報が必要で、スケジュールに影響を与える主な要素は以下の通りです。

  • 保有設備(加工機械等)
  • 材料・部品
  • 作業者
  • 納期

上記に関わる多くの情報が必要なためIT化が難しく、現場をよく知る工場長やチームリーダーが経験と感で作成しているのがほとんどですが、近年高齢化が進み、スケジュールを作成できる人材の育成が課題となっています。

工程スケジュールに関わる要素について

保有設備

 保有している設備に関してスケジュールするために必要な情報は以下の通りです。

    • 設備稼働可能時間、定期点検等停止時間の情報がスケジュール作成範囲で必要です。例えば、翌日1日分のスケジュールを作成する場合は翌日、1週間分のスケジュールの場合は、1週間分以上のデータが必要です。

    • 設備ごとに製造・加工できる製品は何か。そして、その製品の製造・加工時間はどれくらいかかるか。

    • 製品ごとの洗浄、機械装置調整、部材セッティング等の前工程作業(前段取り)時間はどれくらいかかるか。

    • 製品ごとの部品取りだし、機械清掃、結果報告等の後工程作業(後段取り)時間はどれくらいかかるか。この段取り時間については、作業者によってかかる時間が異なる場合は、作業者ごとに把握する必要がある場合もあります。

 保有設備のない工程としての組立や梱包作業の場合は、作業者や作業チームを保有設備と見立てることでスケジュールが可能です。さらに金型など加工機に取り付けて使用する設備もあります。

材料・部品

 材料・部品に関してスケジュールするために必要な情報は以下の通りです。

    • 個々の製品の加工や組み立てに必要な材料や部品の種類と数量

    • 自社加工製品を次工程の部品として利用する場合は前工程の加工完了時刻もしくは中間在庫への入庫時刻

    • 材料や部品の在庫状況および入庫予定もしくは搬入予定時期

 直接スケジュールには関係しませんが、スケジュールが決まった後は材料・部品の出庫指示書を事前に通知しておくなどの業務が発生します。

作業者

 作業者に関してスケジュールするために必要な情報は以下の通りです。

    • 各製品知識や各設備の操作スキルに関するマッチングリストが必要です。より正確なスケジュールを作成するには、スキルについて操作可能不可能だけではなく段取り時間等で作業者の熟練度をデータ化しておく必要があります。

    • 作業者の勤務スケジュールが必要です。年休やシフト勤務等を考慮した勤務可能時間が必要です。多くの場合、設備の稼働に合わせて作業が割り振られますが、要員不足等により割り振りが不可能な場合は作業者の勤務に合わせて設備のスケジュール変更が必要になります。

納期

 製品の納品時期もしくは製品倉庫入庫時期はスケジュールを作成するにあたり最も重要な情報の一つです。基本的に納期に間に合うようにスケジュールを組みますが、作成した結果納期に合わない製品が出てしまった場合は、再度スケジュールを作り直すことになります。終業時刻を伸ばすなどの対処をしても最終的にどうしても間に合わない製品が出てしまう場合は、注文依頼者との納期調整が必要となります。そのため、スケジュールは営業時点等のできるだけ早い段階で作成して納期調整の発生を予測して納期回答を行うことが求められます。

工程スケジュールの作成について

 工程スケジュールに関わる要素を用いて、工程スケジュールを手動で作成する作業とはどのような業務を行っているか一般的な手順を見てみます。

    1. 新たな注文データを受け取り、注文データから製造製品名、数量、納期(倉入れ)の情報を得ます。この注文データは、事前に仮注文として連絡がある場合やいきなり最短での納品を求められる場合など様々なケースがあるため基本的にはスケジュールを毎日更新します。

    2.  注文データから製品名と数量から加工手順と必要な部品や材料の在庫量を把握し、足らなければ部品や材料の納期を確認します。ここで、緊急の場合や納期に間に合わないと判断した場合は、直接部品や材料の調達や納期調整を行います。また、製品に共通する部品や材料の場合は、他の注文での使用予定も把握し判断する必要があります。

    3.  製品名からその製品の加工工程において加工が可能な全ての保有設備について、何時から使用可能になるか、点検や修理等による設備の停止予定はあるかなどの稼働予定を含めた状況を把握します。同時に製品と数量から加工可能な保有設備ごとに稼働時間を算出します。算出に当たっては、段取り時間も含めて算出しますが、直前の製品の種類によって、清掃や設備の設定変更等で段取り時間が異なる場合もあるため、段取り時間は前後の製品を考慮した時間で算出する必要があります。余談ですが、このあたりの情報、例えば段取りに時間が掛かるので製品Aの後に製品Bを加工してはいけないなどは、現場のノウハウとして最も数値化されていない部分ではないでしょうか。当日の製品の加工順は現場のリーダに任せているという企業がありますが、これ等は上記の理由によるものと思われます。

    4.  把握した情報を基にスケジュールを作成します。ある製品を加工可能な保有設備の中から1つを抽出して直近の使用可能な時間帯に加工時間に段取り時間を含めて割り当てます。その際、直近の時間については、必要な部品や材料の在庫や入荷情報を考慮した上で決定します。また、製品によって複数の工程を経る場合、次工程は加工可能な設備が空いていても前工程が完了後の時間帯を割り当てることになります。この作業を全ての注文データの納期を守った上で保有設備の空き時間が最も少なくなるような組み合わせを考えてスケジュールを作成します。さらに作業員の勤務時間や製品知識、機械操作知識、段取り時間の速さなども考慮してスケジュールに反映します。

 以上のように大変な作業となります。これを毎日行っている人がいることに感謝すべきですが、自ら作成したスケジュールが最良のものであるかは、作成した本人にも判断は難しいのではないでしょうか。実際は企業ごとに製造に工程は様々なので、必ずしも上記の手順とは一致しませんが、スケジュールを作成している方は、おおかた上記のような作業を毎日数時間かけて行っていると考えます。

工程スケジュールの自動化について

 工程スケジュールを自動で作成するにはどのようなステップを踏めば良いのかを考えてみます。まず初めにすべきことは、実際に工程スケジュールを作成している方へのヒアリングです。ヒアリングは、工程スケジュールを作成するために、いつどんな情報を集めているか。その情報はPCを叩けば得られるものから現場まで足を運んで確認するものまであるかもしれません。そして全ての情報が得られた段階で、その情報を基にスケジュールが作成できるかを検証することを忘れてはなりません。なぜなら日々スケジュールを作成している方の頭の中だけにある情報が洩れていることがあるからです。「経験値」=「当たり前」となっているものほど大事な情報として漏れてしまいがちです。情報に漏れがないことが確認できた後は、その情報の収集方法を検討します。例えば、スケジュールを作成する前に部品在庫を確認しているような場合は、部品の在庫管理がシステム化されており、最新のデータが入手可能でなければなりません。当然ですが、工程スケジュールの自動化の前に必要な情報がシステム化されていない場合は、まずその情報を得るための仕組みを作り上げるか、もしくはスケジュールを作成するにあたり都度情報を入力する必要があります。スケジュールの自動化に興味を示していた企業でも、この情報を得るための仕組みを先に作る必要があることから自動化を断念する企業が大変多いのが現状です。

工程スケジュールの活用について

 作成されたスケジュールは作業指示書として当然現場に渡され生産工程に活用されます。毎日、手動でスケジュールを作成している状態ではこの活用で手一杯ですが、もし自動でスケジュールが作成出来たら製造現場以外にどのような活用方法があるかを考えてみます。自動でできるということは、いつでもだれでも必要な時に作成できるということですから、仮の情報を与えることでシミュレータとしても利用ができることになり利用シーンが拡大します。

経営者としての利用

 業務拡大を目的に設備投資を検討する場合に、その設備を導入した場合を想定した仮のデータでスケジュールを作成することで投資効果を把握することができます。例えば、新たに導入しても他の設備が新たなボトルネックとなり期待通りの投資効果が得られないといったことを事前に把握することができ、無駄な投資を避けたり具体的な投資効果を知ることに繋がります。

営業部門としての利用

 新たな営業案件を受注する上で何時納品できるかを仮のデータでスケジュールを作成することで確実性の高い日付をお客様に提示することができ顧客の信頼を得る効果があります。さらに、価格を決める上で仮に作成したスケジュールから保有設備全体の稼働率の上下を知ることができるため、稼働率が高くなれば値引きをしても受注すべきと判断したり、稼働率が低くなるようであれば価格を上げるといった営業判断に利用することができ、収益向上に寄与ます。

購買部門としての利用

 材料・部品を調達する場合に、工程スケジュールから必要な材料や部品がいつ使われるかを知ることができます。これにより、在庫量が一定数を下回ったときに補充する方法から、必要になる時点を予測した購買発注に変更することができ。不要在庫を減らしキャッシュフローの改善に繋げることができます。

 以上のようにスケジュールを自動化することで製造部門だけではなく企業全体に大きなメリットをもたらす可能性があります。今後ますます少量多品種が求められ、工程スケジュールの作成が難しい業務となっていく中で、企業優位性を確保するためにはスケジュールを自動で作成することが必要不可欠となると考えます。

NeuroneWorksの取組について

 NeuroneWorksは、貴社のスケジュールの自動化への取り組みをサポートします。具体的な支援内容は以下の通りです。

    1. 現場のヒアリングによる現状のスケジュール作成方法の調査

       現在スケジュールを実際に作成している方にヒアリングを実施し、何を基に何時どんなスケジュールを作成しているかを調査します。

    2. スケジュール自動化のために必要な情報の整理

       ヒアリングから明らかになった情報を整理して、既存システムから入手可能なデータか、または手書きの一覧など紙媒体として存在する情報か等を整理します。整理ができた段階で、あらためてその情報からスケジュールが作成できるかの検証を行い、課題が発見された場合は、現場ヒアリングに戻って再度検証を繰り返すことで情報の洩れを無くします。

    3. 必要な情報の収集方法の課題と解決策の検討

       既存システムからのデータであれば、既存システムを提供している企業と調整し必要なデータの抽出方法を検討します。それ以外のシステム化されていない情報については、システム化できないか、またシステム化が難しい場合はスケジュールに必要なデータの入力方法について検討します。

    4. スケジュール自動化への提言

       これまでのヒアリングや検討結果をまとめ、自動でスケジュールを作成する手段や実現するために必要な開発計画について報告書として提言します。

 弊社では、スケジュールの自動作成ツールとして「AI工程スケジューラ」を有しておりますが、上記支援におきましては弊社ツールの導入を前提とはしておらず、あくまで貴社にあるべきスケジュールの自動化についての支援をさせて頂きます。